
Googleが2024年5月に正式導入した検索補助機能「AI Overviews(AI概要)」が、検索エコシステムにもたらした影響について、調査会社BrightEdgeが最新レポートを公開しました。その結果によると、従来の検索体験が失われるどころか、「再構築」されているといえる状況が浮き彫りになっています。
表示回数は49%増、クリック率は減少傾向に
BrightEdgeのレポートによると、Google検索でAI Overviewsが表示される割合は全体の約11%に達しており、それによって検索インプレッション(表示回数)は49%以上増加したと報告されています。一方で、検索結果のクリック率は約30%減少しており、ユーザーがAI Overviewsの要約だけで疑問を解決している可能性も見えてきました。
同社CEOのジム・ユー氏は、「AIが検索を終わらせるという前提があったが、実際には検索を拡張している」とコメントしています。「Googleは置き換えられているのではなく、“再構築”されている」との見解です。
ChatGPTやPerplexityとの違いは「引用とブランド名」
レポートでは、Google以外にもChatGPTやPerplexityといった他社のAIプラットフォームも同様の「概要機能」を提供していることに触れています。しかし、それぞれのアプローチには違いがあります。
ChatGPTでは引用が「まれ」な一方、Perplexityは1回答につき平均5件ほどの引用元を提示する設計。ただし、ブランド名の言及はほとんどありません。一方、Googleは引用元とブランド名のバランスを取りながら表示しているとされており、情報の信頼性向上に一定の工夫が見られます。
不完全な1年目——“ピザに接着剤”騒動も
とはいえ、AI Overviewsの初年度が順風満帆だったわけではありません。記憶に新しいのが、「ピザに接着剤をかけると美味しい」という珍回答がSNSで拡散された事例です。この件について、Googleの検索責任者であるリズ・リード氏は、「ユーザーがあまり行わない検索クエリ」による情報ギャップが原因だったと説明しました。
AIは既存の情報が少ないクエリに対して、ネット上のトロール投稿(悪ふざけや風刺)からデータを引っ張ってしまうことがあり、そのまま間違った内容を表示してしまうこともあります。Googleはその後、「ナンセンス」や「風刺的」なクエリに対する処理方法の見直しに着手しています。
インラインリンクで信頼性強化へ
信頼性向上の取り組みとして、GoogleはAI Overviews内にインラインリンクを試験的に導入。これにより、AIが参照した情報源が視覚的に確認しやすくなり、ユーザーが情報の真偽を自分で判断できるようになりました。この仕組みは、誤情報への対抗策としても注目されています。
モバイル検索とも連携、S25シリーズにも拡張
Googleは2025年1月には、AI Overviewsを「Circle to Search」機能と連携させ、Samsung Galaxy S25シリーズにも展開しました。これにより、電話番号やメールアドレスなどをAIが自動で認識し、ワンタップでのアクションが可能になるなど、モバイル検索体験の進化も進んでいます。
GoogleのAI Overviewsは、初年度こそ課題も多くありましたが、検索の在り方そのものを静かに、しかし確実に変えつつあります。表示回数の増加や検索体験の多様化など、ユーザーとの接点はむしろ拡張されている印象です。今後さらにどのような機能が加わるのか、そして検索という行為そのものがどう進化していくのか、引き続き注目していく必要がありそうです。