
半導体業界の国際標準化団体であるJEDECが、次世代モバイル向けメモリ規格「LPDDR6」を正式に発表しました。LPDDR5/LPDDR5Xの後継となるこの新規格は、スマートフォンをはじめ、AIエッジコンピューティング、クライアントPC、データセンター、車載システムといった幅広い分野での活用が見込まれています。
高速・低消費電力を両立する新アーキテクチャ
LPDDR6では、「デュアルサブチャネルアーキテクチャ」を採用。1ダイあたり2つのサブチャネルを持ち、それぞれに12本のデータ線(DQ)を割り当てる構成となっています。これにより、LPDDR5の1チャネルあたり16DQ(2×8)構成に比べて、レイテンシの低減やアクセス速度の向上が期待できます。
また、32バイト/64バイトのフレキシブルなバースト長にも対応し、データ転送の柔軟性が向上している点も特徴です。
電力効率の進化 ― DVFSLとDynamic Efficiency Modeを搭載
LPDDR6は、消費電力をさらに抑えるために動作電圧の最適化が図られており、新たに「DVFSL(低消費電力向け電圧周波数スケーリング)」が導入されました。これにより、低負荷時には電圧と周波数を動的に調整し、無駄な電力消費を抑制できます。
さらに、「Dynamic Efficiency Mode」では、必要に応じてサブチャネルを1つだけ動作させることが可能になり、待機状態や低電力状態での効率性が大幅に改善されています。
安全性と信頼性も大幅に向上
LPDDR6では、オンダイECC(誤り訂正機能)の搭載に加え、CAパリティ+MBIST、PRAC(行単位のアクセス回数管理)、Meta Region Carve-outといった新機能も実装されています。これにより、メモリエラーの検出と修正がより正確かつ迅速に行えるようになり、信頼性とデータ保護の面でも大きな前進となっています。
モバイルにとどまらず、幅広い分野で採用へ
JEDECの理事会会長であるMian Quddus氏は「LPDDR6は、電力効率、高性能、堅牢なセキュリティを兼ね備えた次世代メモリであり、これからのモバイルやAI分野を支える重要な存在になる」と述べています。
また、Advantest社の永島理氏も「LPDDR6の進化は、モバイル用途だけでなく、エッジAI、クライアントPC、データセンター、車載コンピューティングといった多様な分野に恩恵をもたらす」とコメントしています。
なお、LPDDR6の最初の採用メーカーには、MediaTek、Micron、Samsung、SK hynix、Qualcommなどが名を連ねており、今後の製品展開が注目されます。省電力と高性能を両立する新世代メモリとして、LPDDR6の普及が業界全体の進化を加速させることは間違いなさそうです。