GoogleがTensorチップの大幅見直しへ──TSMC製に切り替えも、「遅すぎた決断」か?

Googleが独自開発してきたスマートフォン向けチップ「Tensor(テンソル)」シリーズに、大きな転機が訪れようとしています。最新の報道によると、Googleはこれまで製造を担当していたSamsung(サムスン)に代わり、今後はTSMC(台湾積体電路製造)を採用する方針を固めた模様です。

Pixel 10シリーズ以降では、この新しいTSMC製Tensorチップが搭載される見込みで、性能面や発熱、バッテリー効率といった従来の課題がどこまで改善されるのか注目が集まっています。

「AI特化チップ」の理想と現実

Tensorプロジェクトは、Pixel独自のAI処理や画像処理機能に最適化されたプロセッサを自社開発するという、野心的な取り組みでした。たしかに、Pixelシリーズの写真処理や音声認識の精度は高く評価されてきました。

しかし、肝心の処理性能や電力効率といった点では、QualcommのSnapdragonやMediaTekのDimensityシリーズと比べて見劣りする場面も多く、特にハイエンド市場においては苦戦が続いています。ベンチマークスコアだけでなく、発熱のしやすさやバッテリー持ちの悪さといった実使用上の不満も根強く、Pixel 8世代でもこの傾向は改善されませんでした。

サムスン製造からTSMCへ──体制刷新で反転攻勢なるか

こうした背景を受けて、GoogleはTensorの製造体制を大きく見直すことを決断。これまでチップ製造を担当してきたサムスンから、業界でも高い製造精度で知られるTSMCへの切り替えに踏み切ったとされています。

TSMC製チップによって、これまでのような発熱問題や電力効率の悪さが改善される可能性があり、Pixel 10世代以降のTensorは、これまでとは一線を画すパフォーマンスを発揮する可能性も期待されます。

それでも「Tensorをやめるべき」との声も根強い

とはいえ、業界内では「今から体制を変えるくらいなら、いっそTensorをやめて、QualcommやMediaTekの既製チップに切り替えるべきでは?」という意見も少なくありません。独自設計のメリットよりも、完成度の高い汎用チップを採用することで得られる安定性やパフォーマンスのほうが、ユーザーにとっては魅力的だとする見方です。

特に、Pixelシリーズが「価格に見合った性能を発揮できていない」という声が強まる中で、Googleに求められているのは“理想”よりも“実利”なのかもしれません。

今後のTensorは「進化」か「終焉」か

GoogleがTSMCとの連携を通じてTensorチップをどこまで進化させられるのか、そしてそれがユーザーの信頼を取り戻すことにつながるのか。いずれにせよ、Pixel 10世代の出来次第では、Tensorプロジェクトの存続そのものが問われることになるでしょう。

Googleの「自社製チップ」という夢がようやく現実に追いつくのか、それとも「見切りをつけるべき時」が近づいているのか。今後の展開から目が離せません。

タイトルとURLをコピーしました