
Chrome売却提案に対するGoogleの危機感
アメリカ司法省(DOJ)から違法な独占企業と認定されたGoogleが、検索エンジンとオンライン広告市場での反競争的行為に対して厳しい対応を迫られています。その中で、DOJはGoogleに対し、ウェブブラウザ「Chrome」の分社化を求める方針を示しました。
DOJは、Chromeの売却によって「インターネットへの重要なアクセス手段に対するGoogleの支配を断ち切り、ライバル企業がブラウザ市場にアクセスできるようになる」と主張しています。
この提案に対し、Googleは強く反発。先月行われた3週間にわたる公聴会では、Chrome売却がもたらす影響について熱い議論が交わされました。広告事業に関する別の公聴会も9月に控えています。
「競争はすでに十分存在している」とGoogle
Googleは、DOJの主張に対し「業界にはすでに強力な競争が存在する」と反論。ChatGPT、Grok、DeepSeek、Perplexity、MetaAIといった新興勢力が急速にユーザー数を伸ばしていると指摘しました。
特にOpenAIは、「Googleが分社化しなくとも十分に勝負できる」と自信を示しており、競争環境は健全であるとする証拠として紹介されています。
さらにGoogleは、自社がAppleに年間200億ドル以上を支払ってSafariのデフォルト検索エンジンにしている契約についても、「競争を妨げていない」と主張。実際にAppleは独自にChatGPTを「Apple Intelligence」へ統合し、Motorolaも新型RazrにPerplexityとMicrosoftのCoPilotを搭載するなど、競合の台頭を挙げています。
Chrome売却がもたらすリスク
Googleが特に強調したのは、Chromeの分社化が消費者に与える悪影響です。同社は、Appleのサービス担当上級副社長エディ・キュー氏の証言を引用し、「AppleがGoogleを採用しているのは、それが最良の検索エンジンだからだ」と説明しました(ただし、Safariの検索利用数が最近減少したとの指摘もあり、必ずしも絶対的な信頼ではないようです)。
また、Googleは昨年だけで検索技術に490億ドル以上を投資したことを挙げ、Chromeを手放すことはこれらの投資成果を無に帰すだけでなく、今後の技術革新へのインセンティブも失わせると警鐘を鳴らしました。
最も深刻な懸念として、ChromeをGoogle本体から切り離せば、関連技術にも深刻な影響が及ぶとしています。たとえば、安全なブラウジング機能(Safe Browsing)やChromeOS、オープンソースプロジェクトのChromiumなど、Chromeと密接に連携する多くの技術が劣化し、最終的には「ブラウザ自体が不安定で時代遅れになる」との見方を示しました。
この主張には、ブラウザの標準化団体であるOpen Web Advocacyも同調しており、分社化によるリスクを重く見ています。
判決は夏までに
今後の焦点は、ワシントンD.C.連邦地裁のアミット・メタ判事がどのような判断を下すかに移ります。正式な判決は、アメリカの労働者の祝日であるレイバーデー(9月1日)より前に言い渡される見通しです。
Chromeの運命を巡るこの一連の裁判は、Googleだけでなく、ウェブ全体の未来にも大きな影響を与えることになりそうです。