
2025年4月に発表された「Snapdragon 8s Gen 4」は、Qualcommが手がけるプレミアム志向の高性能チップセット。一方、MediaTekの「Dimensity 8400 Ultra」は、2024年12月に登場したミドルハイクラス向けのSoCです。どちらも最新の4nmプロセスで製造され、AIやカメラ機能なども強化されていますが、実際のパフォーマンスはどう違うのでしょうか?
両者の違いを、仕様、ベンチマークスコア、グラフィックス性能、接続性など、多角的に比較していきます。
まずは基本スペックをチェック
項目 | Snapdragon 8s Gen 4 | Dimensity 8400 Ultra |
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発表時期 | 2025年4月 | 2024年12月 |
製造プロセス | TSMC 4nm | TSMC 4nm |
CPU構成 | Cortex-X4 ×1(3.21GHz) Cortex-A720 ×7(最大3.0GHz) | Cortex-A725 ×8(最大3.25GHz) |
GPU | Adreno 825 レイトレーシング対応 | Mali-G720 MP7 レイトレーシング対応 |
NPU | Qualcomm Hexagon NPU | MediaTek NPU 880 |
メモリ対応 | LPDDR5x(最大8533Mbps) UFS 4.0 | LPDDR5x(最大8533Mbps) UFS 4.0+MCQ |
カメラISP | Spectra 18bit AI ISP(最大320MP) | Imagiq 1080 ISP(最大320MP) |
通信 | 5G(最大4.2Gbps) Wi-Fi 7、Bluetooth 6.0 | 5G(最大5.17Gbps) Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.4 |
ベンチマークテスト:Snapdragonが一歩リード
実機として、Snapdragon 8s Gen 4は「Redmi Turbo 4 Pro」、Dimensity 8400 Ultraは「Poco X7 Pro」に搭載され、それぞれAnTuTuとGeekbenchで計測が行われました。

AnTuTuスコア比較
項目 | Snapdragon 8s Gen 4 | Dimensity 8400 Ultra |
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総合スコア | 2,050,881 | 1,590,202 |
CPU | 460,339 | 370,994 |
GPU | 852,942 | 567,384 |
メモリ | 410,236 | 329,331 |
UX | 327,364 | 322,493 |
Snapdragonは全項目でDimensityを上回り、特にGPUでは約50%の差をつける圧倒的な性能を示しています。
Geekbenchスコア比較

項目 | Snapdragon 8s Gen 4 | Dimensity 8400 Ultra |
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シングルコア | 2,041 | 1,579 |
マルチコア | 6,833 | 6,238 |
シングルコアでは約29%、マルチコアでも約10%の差があり、日常的な操作からマルチタスク、ゲームまで全体的にSnapdragonに軍配が上がります。
処理性能とグラフィックス性能の違い
Snapdragon 8s Gen 4は、高性能なCortex-X4コアを1基採用しており、ピーク時の処理能力に優れています。対するDimensity 8400 UltraはすべてCortex-A725で構成され、効率性と長時間駆動に特化した設計です。
GPUについては、SnapdragonのAdreno 825が描画性能やシェーディング処理で優れており、ゲーミングや高負荷処理で安定したフレームレートが期待できます。DimensityのMali-G720 MP7も高い性能を持ちますが、総合的なグラフィック処理ではやや見劣りします。
カメラ機能にも差が
Snapdragon 8s Gen 4に搭載されるSpectra ISPは、最大320MPまでのカメラに対応しつつ、リアルタイムで250層のセグメンテーションを行うことが可能です。ゼロシャッターラグや高度なAI補正機能も備えており、写真・動画撮影における完成度の高さが特徴です。
一方、Dimensity 8400 Ultraも最大320MPに対応し、HDR動画撮影にも対応していますが、ソフトウェア処理のレイヤー数やAI補助の精度ではSnapdragonにやや遅れをとります。
通信性能でもSnapdragonが優勢
Snapdragon 8s Gen 4は、Wi-Fi 7やBluetooth 6.0といった最新規格に対応しており、最大5.8Gbpsの通信速度を実現します。これに対し、Dimensity 8400 UltraはWi-Fi 6EとBluetooth 5.4にとどまり、若干の差があります。
5Gの通信速度では、Dimensityが5.17Gbpsとわずかに上回る数値を示していますが、総合的な接続性ではSnapdragonが先進的な仕様となっています。
Snapdragon 8s Gen 4は、総合的に見てDimensity 8400 Ultraを上回る性能を持つSoCです。CPU・GPUともにパフォーマンスが高く、AIやカメラ機能、通信規格など、あらゆる面でバランスの取れた仕上がりとなっています。
一方で、Dimensity 8400 Ultraは省電力性や長時間の安定動作に重点を置いた設計で、コストパフォーマンスを重視するミッドレンジ機に適しています。ゲームやマルチタスクでの快適さを重視するならSnapdragon、日常用途を効率的にこなしたいならDimensityという選び方が良さそうです。