発売からわずか数週間で世界的に販売中止となったソニーの最新フラグシップスマートフォン「Xperia 1 VII」。その背景を探る中で、オープンソースとして公開されたソースコードから、思いもよらぬ事実が判明しました。
本記事の情報は、テック系ニュースサイト「すまほん」による独自分析とGitHubに公開されたソースコードに基づいています。
Snapdragon 8 Eliteのコードネームは「shimanto」

ソニーのXperiaシリーズでは、搭載するSoC(System-on-a-Chip)に“川の名前”をコードネームとして付けるのが通例です。たとえばSnapdragon 8 Genシリーズでは「sun」などが過去に使われてきました。
今回、ソニーがGitHub上で公開した「kernel-copyleft」内のソースコードから、Xperia 1 VIIに搭載される最新のSnapdragon 8 Elite(SM8750)のコードネームが「shimanto」であることが明らかになりました。「shimanto」は高知県を流れる四万十川にちなんだ命名で、「日本最後の清流」として知られています。
ODMの痕跡──Huaqinの名がデバイスツリーに
しかしそれ以上に注目すべきは、Device Tree(デバイスツリー)と呼ばれるハードウェア構成ファイルに記された「huaqin」という記述です。これは、中国の大手ODM(Original Design Manufacturer)である**Huaqin Technology(華勤技術)**を指しており、Xperia 1 VIIのハードウェア設計に同社が関与している可能性を強く示しています。
Xperiaシリーズにおいて、これまでHuaqinが関与していたのは主にミッドレンジモデルである「Xperia 10」シリーズであり、その場合もコード内にHuaqinの名前が明記されていました。一方、フラグシップモデルである1シリーズは基本的にソニーが自社開発し、製造のみを海外工場へOEM(Original Equipment Manufacturer)委託する形が主流でした。
OEMとODMの違いとは?
ここで、OEMとODMの違いについて簡単に触れておきましょう。
- OEM(Original Equipment Manufacturer):設計は発注元(この場合はソニー)が行い、製造のみを外部企業に委託する形態。品質や仕様のコントロールは基本的に自社が担います。
- ODM(Original Design Manufacturer):設計から製造までを外部企業に一任し、発注元はブランド名を載せるだけという形態。コストや開発期間の面で利点がある反面、品質管理の難しさも伴います。
今回の「huaqin」記述が示す通り、Xperia 1 VIIはフラグシップモデルとしては初めて、ODMでの開発が行われた可能性があります。
「shimanto」は“最後の清流”なのか?
高知県の四万十川の名前を冠した「shimanto」というコードネーム。ダムのない清流として知られるその川の名前が、ハードウェアを外部委託に切り替えたXperiaの現状に照らし、皮肉にも“最後の清流”を象徴しているかのようにも感じられます。
販売停止となったXperia 1 VIIが、文字通りシリーズ最後の純粋なXperiaだったのか──ファンにとっては複雑な想いを抱かせる今回の出来事。今後の動向が注目されます。