― 制裁下でも自力開発で突破口を探る姿勢を強調

米国による輸出規制で半導体開発に苦戦を強いられているファーウェイですが、同社のCEOである任正非(Ren Zhengfei)氏は、中国国営メディア「人民日報」の取材に対し、「チップ問題は心配する必要はない」と語り、独自技術の開発と長期的な自立化戦略に自信を見せました。
「我々はまだ米国に一世代遅れている」──現実を見据えた発言も
AppleやQualcommといった米国勢が3nmプロセスのチップを商用化し、2nm世代に向けた準備を進める中、ファーウェイは依然としてその背中を追う立場にあります。しかし任氏は「米国が我々の技術力を過大評価している。実際にはそこまで到達していない」と冷静に現状を受け止めながらも、「1世代の差であれば、数学で物理を補い、非ムーアの法則でムーアの法則を補完し、クラスタ計算で単一チップを支えることが可能」と述べ、ハードとソフトを組み合わせた独自の戦略で差を埋めていく考えを示しました。
ソフトウェアについても「我々にとってのボトルネックではない」と明言しており、全体としてはむしろ前向きな見解が伺えます。
ASMLなしで進む中国の半導体産業
中国の半導体業界全体にとって最大のハードルのひとつは、オランダASML製のEUV(極端紫外線)露光装置へのアクセスが制限されている点です。この機器は現在の最先端チップ製造に欠かせないものですが、中国企業はこの障壁を別の方法で乗り越えようとしています。
その代表格であるSMIC(中芯国際)は、EUVに依存しないリソグラフィー技術を使った5nmプロセスの製造を試みており、歩留まり(良品率)はまだ約30%とされています。また、コスト面でもTSMCなどと比べて40~50%高くなるとの試算もあります。しかし、このような不利な状況下でも開発を続けることで、時間はかかっても独自技術の積み上げが期待されています。
諦めないファーウェイ、自力で未来を拓く
任氏の発言からは、短期的な成果よりも長期的な技術自立と持続可能性を重視する姿勢がにじみ出ています。米中間の技術摩擦が続く中、「西側に過度に依存することのリスク」が明確になった今、中国国内では“自前主義”への機運が高まりつつあります。
これは、スマートフォン分野でも類似した現象が起きており、たとえばソニーのXperia 1 VIIが唯一採用している連続光学ズーム機構のような高度な技術が、他社に模倣されつつある現状にも通じます。ファーウェイが将来的にこうした独自技術の開発に成功すれば、現在の遅れを逆転する可能性も否定できません。
ファーウェイおよび中国半導体業界の挑戦は、困難な状況の中でも止まることはありません。今後、どのようにして世界の最先端と肩を並べるか、その動向には引き続き注目が集まりそうです。